「ビル風」楽曲解説

こんにちは。作曲家の雨森六花です。

先日公開した楽曲「ビル風」について解説します。
楽曲内で歌われていることの解説や、具体的な作曲テクニックについて書いていこうと思います。

楽曲のテーマ

テーマは「こんなに人がいるのに孤独」

数年前にちょっとした用事で都心のビル街を散策する機会がありまして。

その時に道行く人や街並みを見て、「こんなに栄えていて、人もたくさんいるのに、この人たちみんなそれぞれ知らない人なんだな。こんなにたくさん人がいても、一人なんだな。」とふと考えたのがこの曲の始まりです。

作中にたびたび出てくる強い風、ビル風は、そんな孤独を感じている主人公に対して無慈悲な存在として描きました。
孤独と葛藤する主人公に対して「それでも時間は進んでいくんだよ。生きていかないといけないんだよ。」という現実を見せてくる強い風、という構図です。

共感し、寄り添う音楽

この曲は応援歌ではありません。
楽曲の結末として、主人公はその壁に打ち勝ったりポジティブになったりはしてません。
ただ、つらいことしんどいことがあったときに、少しだけ共感して、寄り添えるような曲になればいいなと思って書きました。

楽曲のつくり

楽曲のほとんどが”王道進行”

イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、そのほとんどが王道進行「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm」でできてます。
意図的にやったというよりかは、作りながら最適解を探していたら自然とこうなった形です。

ただし、Aメロとサビとでは同じ王道進行でもコードの切れ目が違ったりします。

サビでは王道進行の後にパッシングディミニッシュを取り入れています。これもJPOPではとてもよくみるコード進行のテクニックで、私はこの曲以外にも王道進行の後でよく使います。

synthesizerVがすごい

この曲をソフトウェアシンガーに歌ってもらうことは決めていたのですが、誰に歌ってもらうかをしばらく悩みました。
VOCALOIDもCevioAIも持っていて、試してみたのですがどうにもしっくりこず、最後に試したのがsynthesizerVの夏色花梨さんでした。

まず驚いたのは、synthesizerVはベタ打ちでも歌がうまいんですね。芯のある声でブレにくく、それでいて棒読みではない。自動調整で表情をつけるとさらに人間に近くなりました。

この曲で言うと、夏色花梨はかなりはきはき歌うタイプなので、曲調に合うように設定値をいくつか調整しました。

基本パラメータはこんな感じ。このパラメータは少しいじるだけで大きく変化しますが、トーンを大幅に下げることでおしとやかな歌声を目指しました。

また、子音の発音が強すぎる箇所が多かったので、その部分はしゃくりにしたり、子音の音量や長さを一つずつ削りました。

synthesizerVは素晴らしいソフトなのに、その割にハウツーがネットにあまりないので、そのうち記事にしたいと思っています。

歌詞

心の隙間を見透かすみたいに 横から強い風が吹いた
それがどうしたって知らないふりをして 目隠ししてる髪を梳いた

足元がふらついて 飛ばされてしまいそうで
掴まれるものもなくて

見上げた空 とても遠い 吹き荒ぶビル風が
全部無視して吹き飛ばそうとしてる
下手な嘘で ごまかしたり 強がってみるけれど
やっぱりここに私はいないみたいで

何度も悩んで出した結論を 時間が簡単に揺さぶる
それはどうしたって叶わない絵空事 叫んでみても吹き消された

意味のない見栄と嘘 平気だよ 囁いて
救われることもなくて

途切れた夢 もろく もろく 笑ったすきま風を
誰かのせいにすることもできなくて
強い風は向かい風で うまく歩けないけれど
このままでいいなんて言えない

こんなに近くに誰かがいるのに 不思議なほどにひとりひとりで
飛ばされないように 必死で 必死で
寂しいよ……

見上げた空 とても遠い まるで無関心のよう
こうやってきっと当たり前になっていく
暗い青空 ほとんどが影 作られた迷宮を
風が抜けていく 誰も気にせず どこかへ

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