【DTM】BGMとインストの違いを考える【DOVA-SYNDROME審査落ちた】

こんにちは。作曲家の雨森六花です。

さっそくですが、DOVA-SYNDROMEの作曲者審査に落ちました。

DOVA-SYNDROMEは言わずと知れた無料BGM配信サイトの大手です。
私たち個人のクリエイターもDOVA-SYNDROMEで楽曲を配信することができるのですが、そのためには最初に楽曲による審査を行わなければなりません。

審査回りの話はすでにたくさんのブログで語られているので割愛しますが、私はその審査で無事落ちました。落ちると向こう半年は申請できないんだそうです。ショック。

落ちた理由は明かされないのですが、正直落ちた理由に心当たりはあります。
ずっと自分が見てみぬふりしてきたウィークポイントがあって、そこを見抜かれました。
この記事ではその分析を行い、これからどう対策していくのかを考えていきます。

審査に出した楽曲を振り返る

審査に出したのはこの三曲です。

自分で言うのもなんですが、結構いい曲じゃないですか?
ゲーム音楽という想定で作った曲なのですが、ループもできるようになっているし、十分戦えるのではないかなと思っていました。

しかしこの三曲、果たして”BGM”とは言えるのでしょうか……?

“BGM”と”インスト曲”は違う

ずっと見てみぬふりしてきた私のウィークポイント。
それは“BGM”と”インスト曲”が混同しているということです。
※なお、ここで言うインスト曲とは、歌モノ曲の歌を楽器に置き換えたような音楽と定義しておきます。

BGMとインスト曲は別物ですが、具体的には”主役はだれか”という点で大きく異なります。

インスト曲は多くの場合、その曲だけで成立するように作られています。
いわば、主役は曲自身です。曲を聞かせることがインスト曲の目的です。

一方BGMはBackgroundMusicというだけあって、背景です。
主役はその音楽のオモテで動いている映像だったり、イベントだったりします。その主役を盛り上げるのがBGMの目的です。これだけでも大きな違いがあることが分かりますでしょうか?

私が審査に落ちた理由は
「BGMを配信するサービスに対してインスト曲で勝負しに行ったから」です。
※たぶん。DOVAは落ちた理由は非公開です。


さて、BGMとインスト曲には役割に違いがある、別物であるということはわかりました。
それでは楽曲の中身は具体的にどう違うのでしょう。
審査に落ちた時に、私は改めてDOVA-SYNDROMEで公開されている曲と、自分の曲の聞き比べをしました。
それによって見えてきた違いがいくつかあったので、それについて、以下の三点で解説していきます。

①メロディの頻度が違う
②メロディの音色が違う
③展開のさせ方が違う

①メロディの頻度が違う

まず、メロディの音数が圧倒的に違います。
これはDTMをしていない人でも、もしかしたら気付く人は多いかもしれません。

インスト曲は自分が主役ですから、メロディアスなメロディがしっかりついてますし、音量も大きめに調整されます。副旋律もバッチリついています。

一方BGMは、なんならメロディ一切なしの曲も少なくありません。
あったとしてもなんとなく副旋律的というか、ロングトーンが多かったりアルペジオだったり、要所でちょっと出て来るだけだったり、効果的に使われています。

BGMが流れているオモテには、だいたい人の声があります。
Youtuberや番組司会者のトーク、ドラマや劇中のセリフなどなど……。
BGMではこれらの声がメインメロディです。

主張の激しい楽器のメロディを入れると、人の声と競合してしまい、音楽がうるさく感じます。
人の声をメインメロディとしたオケを作るイメージで、背景になっていきましょう。

②メロディの音色が違う

いきなり矛盾させるのですが、よいBGMの中にはメロディがしっかり入っているものもあります。
ただ、そういうメロディの多くには減衰の早い音が使われているという共通点があります。

たとえばアコースティックギターや三味線のようなピッキングするタイプの生音弦楽器
たとえばマリンバやシロフォンのような軽い音のクロマチックパーカッションなどが多いですね。

これらの音は減衰が早いので、メロディを奏でてもすぐに引っ込み、メインである人の声などを邪魔しにくくなります。

ちなみに、弦楽器だからと言ってひずんだエレキギターをメロディにしたり、
マリンバの親戚でしょうと言ってグロッケンをメロディにするのは、あまりよくないかなと思います。
ひずんだ音や高い音は、聞く人の耳につきやすいためです。

逆にそういう音色はインスト曲で使うと効果的です。

③展開のさせ方が違う

インスト曲の構成は歌モノに近いです。
簡単に言うと、Aメロ→Bメロ→サビだったり、Aメロ→Bメロ→Aメロだったりですね。
(これらAメロとかBメロとかの単位をここでは「モチーフ」と呼びます。)

最初のモチーフから次のモチーフに移る時、多くの場合はコード進行や楽器構成が変わり、それによって曲の雰囲気が大きく展開していく様を表現できます。

BGMでそれをやったらどうでしょう。
これは私自身BGMを使う側の活動を長くしているので、その経験上のお話なのですが、
BGMは映像の1展開ごとに1曲を割り当てていくことになるので、曲の方向性があちこちに行かれるととても使いづらくなります。

BGMを作る際は、基本的に一つのモチーフ、多くても二つのモチーフで構成するのがよさそうです。
展開させたくなったら、それはまた別の曲として作ればいいのです。曲数が増えてお得です。

とはいえ、それではつまらない音楽になってしまう。ワンループがすぐに終わってしまう。
ということで悩むことになりそうです。背景とはいえ作曲家にも”いい曲にしたい”という矜持があります。

コード進行が同じなら、打楽器やFXを工夫することで対策できます。
・シェイカーやベルの音を入れる
・プラック音やノイズスウィープを入れる
・フォーリーサウンドを入れる

曲の全体に入れず、一部分に隠し味的に散りばめるのがポイントです。

また、コード進行を変えて展開するのが難しいのなら、そのまま三度上に並行転調してしまうというのもありです。
転調した後また数小節したら三度下に帰ってくる。これだけでもだいぶ演出として様になりそうです。

あとは楽器を変えるのも一つの手です。
例えばウッドベースが弾いていた低音のフレーズを一時的にピアノの左手に担当させるなど。

こればかりは実際の曲を流しながら解説した方が分かりやすいかもしれませんが、いま落選したばかりで参考曲の持ち合わせがないのでまたいつか

まとめ:審査に落ちてよかった

ということで、例外もたくさんあるとは思いますが、まずはざっくり研究してみました。

BGMとインストの違い。
今まで頭ではわかっていてもなかなか分けて考えることができないでいました。
それを考えなければいけない状況に、この段階でなっておいてよかったです。

もしDOVA-SYNDROMEの審査にあのまま通っていたら、私はまだしばらく主張の強いインスト曲をBGMだと言い張っていたことでしょう。最近すこし慢心していたので、現実を突き付けてくれて助かりました。

次にDOVA-SYNDROMEの審査ができるのは半年後です。
それまでにより研究を重ねて、BGM量産人間になろうと思います。

とりあえず落選通知を受けてすぐに、この研究結果に基づいた習作をラフ段階まで作ったので
この調子で詰めてみようと思います。

おわりです。

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